呼吸を考える〜②どんなブレスをどれくらい?
さて、前回の記事は「管楽器奏者のブレスは何のために行うもの?」というクエスチョンで締めくくらせて頂きました。今回はこの問題から続けて考えてみましょう。
色々な答えのある質問ですが、ここではシンプルな回答として、ずばり「息を吐いて音を作るため」とさせてください。それではその目的のために必要なブレスの「量」と「質」はどのようなものか、今回少し時間をとって考えてみましょう。アレクサンダー・テクニークの考える「不要なことを止める」ために、一度必要なことをクリアにしたいのです。
必要なブレスの「量」と「質」。これは出したい音の「音量」、「音域」、「音価」に応じて答えが変わる問題ですね。大きい音は小さい音よりも息の量は沢山必要になりますし、高い音は低い音より少し速いスピードの息を必要とすることが多いでしょう。音を長く伸ばすならその分必要な息の量も多くなるはずです。
前回に言及した「とにかく沢山吸おう!」というプランが演奏に際して問題になりうるというのは、ごく単純に言って、このような考え方に従って必要性を視野に入れずに一生懸命に吸おうとすると、必要以上の息を吸おうとして余計な力が身体に働いてしまい、過度な緊張で効率的な呼吸を妨げていることがあるからです。
ちょっとした発想の付け足しでしかないと思われるかもしれませんが、もし考えたことがなければ、次のことを考えて実験してみてください。息を吸ってロングトーンをしてみます。実際に音を出すに先立って、以下の点をチェックしてみましょう。
息を吐くことで出したい音の
①音量はどの程度でしょうか?
あなたの考えるpp からffの範囲で出来るだけ具体的に、明確にイメージしてみてください。
②音域はどの程度でしょうか?
例えばペダルのB♭或いはCから、highB♭或いはCの範囲で、出来るだけ具体的に、明確にイメージしてみてください。
③音価はどの程度でしょうか?
どのテンポで何拍伸ばすのか、明確に決めてみてください。
以上の点を出来るだけ明確にしてロングトーンをしてみると色々なことが分かるでしょう。明確であればあるほど正確で役に立つ「情報」が得られます。ロングトーンをしてみて、息が余っていることが分かった方はもしかしたら息を吸い過ぎて不必要な力の働きかけで緊張が起こっているかもしれません。見直してみる価値があります。逆に息が途中で足りなくなることが分かった方はもっと時間をかけて沢山の息を吸う必要があるかもしれません。
色々なパターンのロングトーンを試して、自分の「ブレス」と自分の意図する「音」がどんな関係にあるのか、実験精神を持って探求してみてください。ブレスを考えるヒントは、試したら試しただけ沢山見つかるはずです。
ところで、この際にちょっと気をつけて欲しいのですが、やりたいことは「情報集め」であって「採点」ではないことを忘れないで欲しいのです。
楽器の練習に一生懸命であるほど、自分の「意図」と「現実」が異なることを単純に「失敗」と見做してしまったり、「意図」した通りの結果がでることこそが「成功」と二極化して考えやすいのですが、こういう考え方は、端的に言って自分に優しくない思考になりがちです。こういうシビアに成功と失敗を突きつけるメンタルが自分を前向きにしてくれるという人は良いのですが、概ねにおいて自分に厳しく当たりながら練習することが緊張につながってしまい、どんどん意図した演奏が困難になるということが起こりやすいのです。
例えば、ロングトーンで息が続かなくて音が揺れてしまうということが、楽器の大きなテューバでは特に初心者に起こりがちなのですが、これは「失敗」ではなくて、単純に「このブレスで、この音域をこの音量で、この長さをキープしたらこうなった」という結果・情報として受け止めるべきだと思います。
ちょっと脇に逸れてしまいましたが、ブレスを探求する上でも、「いいブレス」「悪いブレス」という二分割で考えながら実験するのではなく、自分の意図に対して「適切なブレス」をその都度に探してみようという態度で情報を集めてみてほしいのです。
ぜひ実験して試してみてください!
さて、ブレスに対する意識の置き方を考えようという記事が長く続いてしまいました。次回からはいよいよブレスに役立つ身体の使い方を考えてみましょう(^^)
次回に続きます〜
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