言葉の意味を探求する〜「頭が前に上に」って?

アレクサンダー・テクニークのレッスンではとても多くの「言葉」が交わされます。

先生は生徒さんの身体の動きを観察しながら、動きの質を改善するために訓練された「手」を使うのですが、それと併せて、しばしば「言葉」を使って生徒さんをリードする場面も見られます。

アレクサンダー・テクニークのレッスンでは「言葉」と「手」のコミュニケーションが非常に重要なんですね。

そんな「言葉」の中でも特に良く聞かれるのが「頭が動いて身体全部がついて行く」とか「頭が前に上に動いてから…」というような「頭」の使い方を指示する言葉です。「頭」と「脊椎」の関係はアレクサンダー・テクニークの骨子とも言える本質的な部分ですから、そこに触れる言葉もしばしば耳にすることになるのですね。

こうした「言葉」を受け止める際に大切なのは、言葉の意味をその時その場の状況に照らし合わせて自分なりに探求してみるということだと思います。
あるいは、別の言い方をすると「何のために」その言葉が使われるのかを考えることが学びを進める上で重要だと思うのです。

例えば、これもアレクサンダー・テクニークの重要な方向付けの一つで「頭が前に上に」という言葉があるのですが、この意味も生徒自身が、或いは使う先生と一緒にその都度探求する必要があると思います。

ここでの「前」とか「上」というのは、空間的な位置関係を指しているものではありません。
そうではなくて、自分の「脊椎に対して」頭が「前に上に」あるということが指示されているのです。
例えば私が今日レッスンしてもらった動作で「床のモノを拾う」という動きがあります。足元に目を向けて、手を伸ばすわけなので、当然空間的には頭は「前に下に」動いています。
けれど、アレクサンダー的な脊椎との関係に置いてはこの時も頭は「前に上に」動いていると考えるのです。

この「前に上に」という言葉が実際に頭がどのように動いていることを指しているのかというのは実はとても深い問題です。

ちょっと脱線するのですが、マージョリー・バーストウといういわゆる「大先生」(現代のアレクサンダー・テクニークの教えの流派の一つを築いたといえる大変な影響力を持っていた人です)がいるのですが、彼女は70歳を過ぎて既に大ベテランの教師であった時代にも、ふとした機会に「頭が前に上にあるとはどういうことなのか」を自ら探求し続けていたそうです。

そのくらいこの言葉の意味は深く重要なのですね。

何となくの予感ですが、この言葉の意味が「正しく」理解されて終わることはないように思えます。これもまた、一人一人、アレクサンダー・テクニークを学ぶ人達が自分の置かれた状況や場面の中でその意味を解き明かしていくしかない言葉であって、(その言葉を単に人から受け止めるだけではなく)自ら解き明かしていくプロセスこそが、一番大切な学びになるのではないかと思うのです。

常に自分にとって重要なキーワードを自分なりに定義して、しかもアップデートし続けていくこと。その繰り返しこそがアレクサンダー・テクニークの学びを形作っているように思います。

さて、それでは一体私自身は今回「頭が前に上に」という言葉の意味をどう考えたのか…これについては長いので次の記事に書きたいと思います(相変わらず前置きが長く恐縮です苦笑)。

もちろん私もまだまだ探求中ですから、これは今の時点での理解でしかありませんが、ここでも「何のために」この言葉が使われるのかを考えることが大きなヒントになると思います。
〜次回に続く〜

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