「こうあらねばならない」とは?
前回、アレクサンダーの重要なアイデアである目的至上主義(end-gaining)とそれを抑制すること(inhibition)についてお話しました。
注意して説明したいのですが、目的を持つこと自体が妨げになるということではないのです。問題となるのは、目的への執着が強すぎて、行為の結果やそのプロセスを客観的に観察・評価することを忘れてしまう時です。
楽器の演奏に限ったことではありませんが、「こうあらねばならない」という思いが強すぎると、私達はつい行為の結果を「成功」と「失敗」に還元してしまいがちです。けれど、よく考えると望んだ結果と実際の結果が異なることはそれ自体が「悪いこと」なのではありません。期待とは違った結果でも、自分の目的に照らしてとても有益な結果であるということは充分あり得ます。
或いは仮に、得た結果が自分にとって何のメリットもなかったというような場合でも、その結果に至ったやり方は「上手く行くプランではなかった」という有意義な情報でもあるはずです。
期待した結果でなかったというだけで全部を否定してしまうと、たくさんの情報やメリットを見落としてしまいます。
それに、ちょっと考えてみて頂きたいのですが、結果やプロセスを全否定してしまう時、実は私達は心のどこかで自分のことも否定して責めていたりするものです。
「またしくじった!」
なんて、つい自分に悪態をついていませんか?心に対するこういう僅かな攻撃でも身体の機能は緊張で大きく損なわれてしまいます。
これらを避けるには、目的への強すぎる執着を意識して手放すことが必要なのですね。
当たり前のことを言っていると思われるかもしれませんが、あえて言えば当たり前の考え方を自分が意識的に実践できているかを問い直す場がアレクサンダーのレッスンということでもあります。
楽器の練習をする時、目的至上主義と抑制を思い出すとたくさんの発見があるかもしれません。
心や思考に関する記事がずっと続いていますが、そろそろ一旦まとめて、新しいトピックを扱いたいと思っています。
もう少しお付き合いくださいね^_^
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