音を選ぼう
アレクサンダー・テクニークのレッスンを通じて繰り返し実感するのは、私達は(意識的か無意識的かは措くとして)いつも何かを選んで行動しているということです。
椅子から立ち上がったり、コップを手にとってコーヒーを飲んだり、椅子に腰掛けてテレビを観たり、歩いて本棚に近づいて高い場所から本を取り出してみたり、日常のいろいろな場面で、私達は次の動きを選んで自分の身体を使っています。
敢えて一つ取り上げるなら、毎日の連続した動きに対して「気づくこと」と「選ぶこと」の機会を増やすことがアレクサンダー・テクニークの学びのプロセスであり、またその気づきが増えることが、アレクサンダー・テクニークを通じて私達が獲得できる恩恵といえます。
楽器の演奏も然り。
実は私達は、気をつけないと「音を選ぶ」というプロセスがとても損なわれやすい環境で楽器に接しています。
無意識の習慣で音を出してしまうということもありますが、同じく気をつけたいのがチューナーやメトロノームとの接し方。
私達はとても当たり前にチューナーやメトロノームを使って、自分の音程をチェックしたり、テンポをチェックしたりしていますが、こういう機械が現れたのは実は音楽の歴史の中ではついつい最近のこと。
チューナーがこんなに普及する前は、演奏家はみんな自分の耳で心地よい音程や響きを聴いて自分で選んで音を出していました。今でも、優れた演奏家の中には「チューナーはあてにならない。自分の耳をきちんと信頼するべき」と唱える人もいます。
もちろん、チューナーやメトロノームが便利で役に立つ道具であることは言うまでもありません。正確なリズムや音程はとても大切です。
けれど、いつの間にか機械に自分の音楽をジャッジされるようになってしまったら本末転倒です。どんな楽器の音色も、すべて演奏する人間の心の中から生まれることを忘れずに、いつも自分の音を選んで奏でることを心がけたいものです^_^
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