「場面」をイメージする
前回、「音楽を表現する」ことの重要性、そして表現する力と演奏する技術との関係について考えてみました。
テクニックと音楽性など、時としてこの2つを切り分けてしまうような考え方がありますが実はそんな二分法は不可能で、表現したい音楽と演奏の技術は深く結びついています。
例えば、単にHigh B♭を正確な音程で伸ばせるという技術以上に、「自分の音楽を表現するために必要となるHigh B♭」を発音できることが大切なのです。
今回は、楽譜を前にしたとき音楽を表現するために何をするかを考えてみましょう。
取り組んでみて欲しいのは「場面」をイメージするということです。
「場面」というのは文字通りに目に浮かぶ景色、登場するキャラクター、そしてそこに展開する動きのことです。これは音楽の表現を視覚に置き換えるということですから、ひょっとしたらこういうアイデアに反発する方もいるかもしれません。けれど、ぜひ試してみてほしいのです。
視覚化するというのは、実は明確化するということでもあります。
そもそも楽譜には、その楽譜のテンポや表情を決める指示が作曲家自身によって書き込まれていることが多々あります。
「力強く生き生きと」とか、「激しく、嵐のように」とか、「ゆっくりと荘厳に」とか、皆さんのお手元の楽譜にもきっといろいろな指示が見られるはずです。
視覚化するという時に行われるのは例えばこういう「力強い」という指示が示すのはどんな力強さなのかを、自分が目で見ることができるくらいに明確に明晰にするということです。
雄大に広がる草原の中を馬達が一列になって走り抜けている
場面なのか。
高い山の上を一匹の鳥が力強く飛び回っている
場面なのか。それを聴く側の人達に伝える必要はありませんし、言葉にする必要もありません。但し、自分の中には強くはっきりと、明確にその場面をイメージして演奏してみる。
これだけで演奏の質は必ず変わります。
そして、そういった質の演奏には、技術てきな完成度の問題とは別に、「音楽を表現する」ことへの入り口が開かれているのではないかと思うのです。
ちょっと理屈っぽい話になってしまいましたが、皆さんの練習している楽譜からどんな「場面」をイメージできるか、ぜひ探求してみてくださいね。
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