「合わせなきゃ」をやめよう

音楽に関わっている人の多くを悩ませるのが「合わせること」の難しさではないでしょうか?

「音程を合わせなきゃ」、「リズムを合わせなきゃ」、「音の入りを合わせなきゃ」などなど。音楽を楽しむには「合わせなきゃいけないこと」がたくさんあります…。

面白いことに、どんなに素晴らしいプレイヤーが集まっても、ある程度リハーサルを重ねて、お互いに「合わせる」ことを繰り返さないと、音程やリズムはきれいには揃いません。同じ楽譜、同じ楽器に取り組んでいても、私たちが持つ音程感やリズム感、テンポ感や音色のイメージ等、一人一人みんな違うものを持っています。そういう違いが音楽家の持つ個性なんですね。そう考えると、音程がなかなか揃わないとか、リズムが初めは揃わないというのもなかなか面白いことかもしれません。

話が少し逸れてしまいましたが、そうは言っても、合奏する、アンサンブルを楽しむためにはやはり「合わせるべき」ところは揃えておきたいもの。けれど、ここで注意したいのはやはり「合わせなきゃ」という意識に対する私たちの反応の方です。

もうおわかりかもしれませんが…「合わせなきゃ」と意識すると私たちの身体は案の定、緊張してしまいます。不必要な緊張が音程にもリズムにも影響して、アンサンブルがやりにくくなってしまう。困りますね…。

例えば、皆さんも経験があるかもしれませんが、合奏で時々起こる、いわゆる「捕まる」というシチュエーション。フルートとクラリネットの音程がなかなか合わなくて業を煮やした指揮者が、フルートとクラリネットだけを「捕まえて」音程が揃うまで何度も二人だけで音を出させたりするのですが、上手くいくときもあれば、やればやるほど何故かどんどん音程が不安定になってしまったり…。

こういう合奏のやり方が上手く行く時もあります。これは指揮者と演奏者同士の信頼関係の有無であったり、練習の雰囲気に左右されることで、一概に何が正しいとは言えませんが、私自身はやはり不必要に「緊張」を強いる方法は基本的に避けるべきだと思います。特に吹奏楽部で音楽を本格的に始めた人はこういう「体育会系」な合奏の方法に馴れきってしまっていることが多いと思いますが、こういうやり方が唯一の方法ではないことも覚えておいて欲しいですね。

また逸れてしまいましたが、皮肉なことに「合わせるべき」ものほど、「合わせなきゃ」と意識すると上手くいかないということです。厄介に思えるかもしれませんが、「合わせなきゃ」と意識することをせずに「合わせる」プランが欲しいわけです。

思い切って考え方を変えてしまいましょう。
ここで提案出来るプランは、合わせなきゃの代わりに「共演者の音を聴く」を始めることです!

これは、ある高名なピアニストが弦楽器とのアンサンブルについて話していたことなのですが、本当に一番大切なのは「音を聴くこと」なのだそうです。本当にしっかりとお互いが共演者の音を聴いていれば、揃うべきものは自ずと揃うのだと言います。

これはなかなか示唆に富んだアイデアです。私の経験でも、レッスンで「メトロノームに合わせる」と思うのではなく、「メトロノームと一緒に演奏する」など、音楽を聴くことを意識の中心にすると遥かに演奏しやすくなったという人をみたことがあります。

皆さんにもぜひ合奏で試してみてもらいたいプランです!そこで、

今日の質問
「今日は誰の音を聴きますか?」

合奏の時、リハーサルの時、「今日はあの共演者の音をしっかり聴いてみよう」と自分で決めてみる。その人の演奏のすべてを自分の身体全部で聴いてみる。

音だけではなくて、その人とその場所でお互いの全部を感じあえるようなアンサンブルができたらきっと素敵な演奏ができますね!

まずは一人ずつ、共演者の演奏のすべてを聴いて受け止めることを始めてみましょう。アンサンブルが上手くいくだけでなくて、合奏の時間がもっと楽しくなるかもしれません。

質問への回答や、新しい気づきがあったらぜひ私にも聞かせてくださいね!
yasutakatonoike@gmail.com

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