「音を聴いて!」という言葉の落とし穴
吹奏楽部の指導で良く見られる言葉の一つに
「もっと音を聴いて!」
というものがあります。
白状すれば、私も合奏の指揮をするためにこの言葉を使うことはあります。
「音を聴く」のはアンサンブルの基本中の基本。音程やリズムを正確に表現するためにはお互いにお互いの音を聴くことは必須です。
ところが、どんな言葉も文脈次第で受け取り方が異なるように、この言葉も指導する人の思惑とは裏腹に有害なメッセージになってしまっていることが少なからずあります。
「音を聴いて」という言葉で意図されるのは、恐らくは「お互いを聴きあって音楽を一緒に作るように」というそれ自体はとても前向きな指示だと思うのですが、残念ながらこれに対して実際に生徒が取っている反応が、音楽を妨げるような「首をギュッと固める緊張」であることがままあります。
あくまで推測ですが、指導者に「音を聴いて」と言われた生徒は
「音程がずれているのではないか?」
「発音が良くないのかな?」
というように、不安になりながら自分の「悪いところ探し」をしているのかもしれません。。
これはやはりよろしくありません。不安や恐怖の感情はすぐに不必要な緊張となって身体を固めることにつながります。こうして生まれる緊張感は端的に言って音楽をどこか不自由なものに変えてしまいます。
こういう指導が重なっていくと、
「綺麗に仕上がっているのだけれどどこか息苦しい」
という演奏が生まれてしまいます。
これは避けたい状況ですよね。。
こういう不必要な緊張感を避けるために一番シンプルなのは「音を聴いて」という言葉は使わないことです。この言葉に対して生徒が「不必要な緊張」という反応を示すならば、やはりそれは使わない方が良い言葉なのです。
そうはいっても、アンサンブルを指導する上でどうしても伝えなければいけない場面もあるかもしれない。そんな場合も、生徒自身が
「自分の演奏に何か問題があるのではないか?」
と不安に陥ることがないように、普段から生徒自身が「自分の演奏はOKなのだ」と信じられるような、安心感を持てる環境を常に作っておくこと。
合奏や練習の場所が安心して自分の音を聴けるような場所であることがとても重要です。
日頃から、生徒が恐怖心ではなくて安心の中で音楽を楽しめるような合奏・指導をしていくこと。吹奏楽部を指導する方はぜひ考えてみてくださいね。
今回もお読みいただきありがとうございました。
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