ゴール地点見えてますか?
前回、練習に臨む時の心構えとして
①何がしたいのか
②そのために必要なものは何か
③そのために不必要なものは何か
の3点を自分なりにクリアにすることを大切にして欲しいとお伝えしましたが、この中で一番重要なのが
「何がしたいのか」(何を演奏したいのか)
です。
レッスンは、例えると旅のようなものです。あなたが決めたゴール地点があって、そこに向かう道筋を教師がガイドとなって一緒に進んで行きます。
②と③は言ってみれば、ゴールに向かう方角や道順をクリアにするための質問で、地図と磁石のようなものです。
ここはアレクサンダーの教師が助けることができます。
アレクサンダー教師は身体の使い方を熟知していますし、それぞれ自分の得意分野の知識や経験を持っています(私の場合は金管楽器の知識があります)から、あなたがやりたいことに必要なこと、不必要なことは一緒に整理することができます。
けれど、あなたが目指すゴールについては、教師の側では見つけたり決めたりすることができません。この点だけは教師が決めるのではなくて、レッスンを受ける生徒が自分の求めること、目指すことを自分なりに見つけることから始めて欲しいのです。
あまりに多くの人が
「先生にゴールを決めてもらう」
ことに慣れすぎています。
「次はこれを目指しましょう」
と決めてくれる先生が良い教師と思う人がいるかもしれませんが、それでは
「与えられたゴールを課題のようにこなす」
ことで終わってしまいます。
そして、与えられたゴールと自分で課したゴールでは辿り着いた時の達成感がまるで違います。それ以上に、ゴールに向かう時のエネルギーにも段違いなものがありますから、成功率はまるで違うのです。
「自分のゴールは自分で決める」
ということも、実はアレクサンダーのレッスンの一部とも言えます。
なんだか面倒?と感じる人もいるかもしれませんが、自分でゴール設定ができることは演奏に限らず上達するために何より重要なことだと覚えておいてください。
楽器については
「上手くなる」
ことをゴールだと思っている人もいますが、それではあまりにも漠然としています。漠然とし過ぎていて、具体的な努力の方向もプロセスも見つからないのでアレコレ試してみて結局上手くいかないということになってしまいます。
「ヨーロッパに旅行に行く!」
と言っても、イギリスに行くのかフランスに行くのか、スペインに行くのかで使う飛行機のルートも、持って行かなくてはならない携行品や衣類もみんな違います。訪ねてみたい観光地を決めなくては滞在するホテルや交通機関のチケットも用意できません。
これと同じことで、まずはゴールを決めないと次に何をするのが正解なのか、誰にも分からない。
何をしたらいいのか分からないけれどとにかく手当たり次第に頑張ってみるという恐ろしい旅のプランが出来上がってしまいます。
逆を言えば、
「どの曲をいつまでに、どのように演奏したいのか」
「どの音域を吹けるようになりたいのか」
「どのフレーズの運指をマスターしたいのか」
を具体的に決めることが出来れば努力の方法で迷うことは殆どありません。やるべきこと、やらなくていいことは自ずと決まってきます。
これが、面倒なように思えても一番確実で近道な、言ってみれば上達の王道です。
ある意味アレクサンダーのレッスン以前の問題ともいえますから、ぜひこの点はじっくり考えてみてください。
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